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仙台高等裁判所秋田支部 昭和25年(う)97号 判決

被告人

有田年弘

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人中村嘉七の控訴趣意第一点について

記録によれば原判示第二被告人等の遊興費等一万四千四十円中には田中米蔵の分も含んでいることは所論の通りであるが、記録を精査するも同人が原判示被告人等の詐欺行為に共謀したと認めるに足る資料なくもともと、本件は被告人と原審相被告人簾内富蔵に対する詐欺の事実が起訴され、右田中には何等ふれてる所ないのだから原判決が此の点を判示しないのは正に当然である。また被告人及び原審相被告人簾内富蔵が詐欺行為をするに当つて、たとい他に共犯関係に立つものがあつたとしても被告人等の犯罪行為を判示するには、被告人等自身の「罪となるべき事実」を明らかにすれば足り原判決書によれば原判示はその点において、何等欠くる処がないから原判決には所論のような理由不備の違法は少しもなく、論旨は理由がない。

(弁護人中村嘉七提出控訴趣意書)

第一点 原判決は理由不備の違法がある。

原判決は第二公訴事実の詐欺の点につき、被告人は共同被告人であつた簾内富蔵と共謀の上、料理業大野かね方で同人に対し真実代金支拡の意思がないのに拘らず、恰もこれあるものの様に装つて、同人をして其旨誤信させて合計一万四千四十円相当の飲食物を提供させて遊興し、財産上不法の利益を得たものであると判示しているけれども、共謀したのは被告人と富蔵と二人だけではなくして、田中米蔵と三人であることが一件記録上明瞭であるから、米蔵の起訴不起訴は別問題として事実は三人の共謀と目すべきである。

若し然らずとせば、財産上不法の利益を得た金額一万四千四十円は、これまた以上三名の遊興した金額であることが明らかであるから、之を被告人と富蔵のみの責に帰せしめたのは理由不備と云わなければならない。

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